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  網膜芽細胞腫は網膜から発生する悪性腫瘍です。その発生頻度は1万5千人の出生につき1人の割合で、性別、人種、地域による違いはありません。最近、日本では、毎年80人が発症していると推定されます。

  両眼に出る場合と片眼だけの場合とがあり、その比率は両眼1に対し片眼2.6です。この腫瘍は十三番染色体の長腕の一四という部位にあるガン制御遺伝子の異常によって発生することが分かっています。両眼性の場合は全身の細胞にこの異常があるため、その子供に優性遺伝します。またガン制御遺伝子の異常があるため、骨肉腫などの別の種類の悪性腫瘍の発生頻度が高いので注意する必要があります。

-説明文より-


  医学的には「十三番染色体の長腕一四という部位にある、がん制御遺伝子の異常により、網膜から発生する悪性腫瘍です。両眼に出る場合(両眼性)と、片眼だけの場合(片眼性)とがあり、その比率は両眼1に対し片眼2.6です」と説明されています。

  これを私たちの言葉に置き換えてみましょう。

  物を見ると、網膜に像が結ばれます。網膜はカメラのフィルムのような役割をしています。網膜に結ばれた像は、電気信号に変換され、網膜から脳に繋がっている視神経で脳に伝えられ、脳の分析によって初めて物を見るということになります。

  網膜の中でも黄斑部と呼ばれる部分は、視神経乳頭とともに見るためにもっとも重要な部分で、ここに大きな腫瘍ができると視力に大きなダメージとなってしまいます。また視神経の間近に腫瘍がある場合や、すでに腫瘍が視神経の中に入り始めている場合、視神経は眼球を出て脳に繋がっていますし、途中で脳脊髄液にも触れていますので、治療法と予測される経過や結果については医師と十分に話し合う必要があります。

  悪性腫瘍の細胞は、正常な細胞と異なり、身体に必要な機能を果たすことができません。腫瘍細胞がどんどん増えると、正常細胞は破壊され、その機能も失われていきます。しかも、腫瘍細胞は、本人の命がある限り自分勝手に増え続け、さまざまな形と性質をもった細胞を作り出していきます。そのため、放射線や抗がん剤の治療をしたとき、腫瘍細胞の殆どには有効だったけれど、一部では元気なまま残ってしまい、ほとぼりが冷めたころ、また増殖をはじめるということが起きるのです。これが再発の一つのかたちです。

  ところで、がん制御遺伝子の異常はなぜ起こってしまうのか。これから生まれてくる兄弟、姉妹のため、あるいは病気の子供の将来のためにも、ぜひ知りたい点ですが、残念ながらその原因は未だにはっきりしていません。

  とにかく、この病気にかかると、眼球摘出手術を行わない限り、腫瘍細胞を取り出して詳しく調べることができません。また、治療成績をパーセンテージにして示すことはできても、一人ひとりについては、個々の経過を見ながら予測するしかないのです。この病気はそういう歯がゆさ、難しさは避けられないのです。さらに初診の時点や治療中、経過観察中などに他のさまざまな目の病気を起こすことがあります。

-すくすくより-


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